世界で初めての飼育下双子同時育成

1980年代、1回の出産で双子を産む確率は45%程度と高いものの、
1頭しか育てることができず、パンダの子の生存率は35%程度と大変低い状況。
そのため、双子の生存率向上が大きな課題でした。

1990年に成都ジャイアントパンダ繁育研究基地で“Twins swapping(入れ替え方式)”が成功したことにより、双子が生まれ、2頭とも生存することができました。この方法の成功でパンダの子の育成率は88%と飛躍的に伸び、双子が生まれた場合の一般的な管理方法として、世界の飼育施設で多く応用されることとなりました。

  • Twins swapping
    (入れ替え方式)とは?

  • 双子出産の場合に、子に確実に母乳を飲ませるための方法です。1頭は母親から取り上げて保育器で世話をし、残りの1頭は母親の元で母乳を飲ませます。母乳を飲んだ後に保育器の子と交換します。

  • 産子数(1回の出産で生まれる頭数)

  • パンダの赤ちゃん育成率の推移

    The 2019 International Studbook For Giant Pandaより作成

2003年、当パークで双子が生まれ、母親(名前:「梅梅」)が同時に世話をして育てました。母親による双子同時育成は、飼育下ではこれが初めての事例でした。「梅梅」は1頭目の約2時間後に2頭目を出産し、2頭(名前:「隆浜」、「秋浜」)ともしっかり抱きかかえて子育てをしました。翌日、体重測定の際、2頭ともに黄色のミルク便を確認できたので、充分に授乳していると判断し、継続して母親に任すことに決めました。
一般的に赤ちゃんの体重は、出生後は一旦減少してから増加します。当パークの双子(2006、2008、2010、2014年)の場合、出生時の体重を越えたのは3~6日齢でしたが、「隆浜」と「秋浜」の場合は1日齢でそれぞれ体重160ℊと106ℊ、2日齢で167g(前日+7g)と106g(前日0g)と減少することなく順調に増加しました。2頭とも10日齢で体重が出生時の約2倍になり、生後7ヶ月まで母乳だけで育ちました。「梅梅」はその後2回双子を出産しましたが、2005年に66ℊで生まれた第2子は1日齢で死亡してしまいました。2006年に双子を出産した際には、第1子(名前:「愛浜」)の体重が196ℊ、第2子(名前:「明浜」)は84gで体重差が112gと大きく、「明浜」が確実に授乳できるようにするには、Twins swapping(入れ替え方式)を使うしか方法がありませんでした。2003年の双子(「隆浜」、「秋浜」)同時育児の成功は、「梅梅」の育児能力の高さと泌乳量の多さ、そして出生した赤ちゃんの体重にあまり差がなかったことが要因と考えられました。この間、日中の専門家はジャイアントパンダの双子を、自然保育の行動学のデータとして集め、今後のパンダの赤ちゃんの育成率を高めるための貴重な経験を積み重ねました。2003年のこの事例は、パンダの国際会議において、飼育下において初めて成功した双子同時育成として報告しました。

隆浜・秋浜体重推移