繁殖実績について

国内12年ぶりの赤ちゃん誕生

自然繁殖を最重要課題に
日中共同繁殖研究では、飼育環境下での自然繁殖を最重要課題としています。自然繁殖できる環境を整備し、行動や体の変化の観察、ホルモン測定などを行い、オスとメスの発情の状況を知り交配適期を判断。自然繁殖を優先しますが、交配回数が少ない場合や、メスの発情が継続しているにもかかわらず、オスがメスに対して興味・関心がなくなった場合のみ人工授精も併用しました。
人工授精による「梅梅」の妊娠・出産
「梅梅」は1999年に5歳の時、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地で初めて繁殖し、2頭の子を育成させました。2000年の春に発情をして成都ジャイアントパンダ繁育研究基地で人工授精が実施され、同年7月に当パークに搬入されました。8月上旬より睡眠時間の増加、採食量の減少、尿中の妊娠ホルモンの上昇などといった妊娠兆候が確認され、9月6日に1頭の子(名前:「良浜」)を出産しました。1988年に上野動物園でパンダの出産が確認されて以来、国内では12年ぶりのパンダの赤ちゃんの誕生になりました。

繁殖研究のスタートと成果

「永明」 &「梅梅」ペアで4回8頭の出産
2001年から本格的な繁殖研究がスタート。2001年8月下旬には、「梅梅」に発情兆候が確認され、それに誘因されるように「永明」にも繁殖行動が確認されて交尾、そして12月の出産に至りました。2001年から2006年までに、このペアで4回8頭の出産で、6頭が育成した(1頭は1日齢で死亡、1頭は死産)。2003年には、飼育下で初めての双子同時育成に成功。パンダは春に発情して夏から秋にかけて出産する季節繁殖の動物ですが、季節外の夏に発情して12月に出産するという貴重な事例も2件認められました。子育て能力の高い「梅梅」でしたが、残念ながら2008年10月に病気で死亡しました。

自然交配ができるオス「永明」

28歳での自然交配に成功した「永明」
2000年初頭、飼育下で生まれたオスの自然交配の成功率は大変低いといわれていましたが、2歳で来園した「永明」は自然交配ができる貴重なオスとなりました。2001年に初めて自然交配に成功後、毎回、メスの発情兆候にあわせて交配まで至っています。一般的にはオスの繁殖年齢は20歳までと報告されていますが、「永明」は2020年に28歳で自然交配で子が生まれており、高齢にも関わらず繁殖能力を維持しています。2001年から2010年の期間に16回の精液採取を実施したところ、「永明」の精液性状は、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地で採取した精液性状とほぼ同等の良好な物でした。採取した精液は、当パークでの人工授精に使用する他、重要な遺伝子供給源として凍結保存しています。2002年には、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地にて「永明」の精液を使用した人工授精が行われ、同年に1頭のオスが誕生しています。このように「永明」の精液は、当パークだけでなく、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地でのパンダの遺伝的多様性に貢献しています。

中国における繁殖実績

世界中で活躍する当パーク系統のパンダ
2004年6月22日、日本で初めて国際共同繁殖研究で生まれた「雄浜」は、協議書に基づき成都ジャイアントパンダ繁育研究基地に搬出されました。その後、計11頭の当パーク生まれのパンダが中国に移動。 2019年の国際血統登録書によると、繁殖子を中国に搬出したのは当パークを含めて8施設に及びますが、その中でも最も成績が良い施設となっています。中国に搬出されたパンダは、中国国内での繁殖計画に組み込まれました。うち、オス2頭とメス2頭が繁殖に関与し、20頭以上の子が誕生。「雄浜」の子は、海外での繁殖計画にも参加し、当パーク系統のパンダが世界でも活躍しています。