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Safari&Marine

Safari&Marineラッコのブリーディングローン

2012年07月15日(日)

 2012年5月末現在、国内のラッコの飼育頭数は14園館29頭と、1994年ピーク時の28園館122頭に比べて、4分の1にまで減少しています。繁殖が難しいラッコは出産しても順調に成長する例も少なく、また寿命は15〜20歳、繁殖適齢期は13〜15歳までです。国内のメス17頭のうち9頭が15歳以上と高齢化が進んでいることも影響し、飼育数は減少の一途を辿っています。

 2011年11月下旬に、福岡県の海の中道海洋生態科学館より、飼育しているオスを移動できるとの朗報が入ってきました。ブリーディングローン制度を利用し、繁殖経験がある13歳のオスを借り受け、当園の4歳のオスを貸し出すことになりました。
 アドベンチャーワールドでそれまで飼育していたオス1頭とメス2頭は血縁関係にあり、繁殖を進めることができませんでした。そのため、他の施設で飼育している別血統のラッコを迎えることができないかと、検討を重ねてきました。


※ブリーディングローン(繁殖貸与)
繁殖を目的にして飼育動物の貸し借りを行う制度。特に希少動物の繁殖のために、国内外を問わず利用されています。

 2012年1月17日、海の中道海洋生態科学館より念願のオスのラッコが搬入されました。ラッコは、とても神経質な動物で、輸送によるストレスで死に至ることもあります。輸送時の体制は万全に整えていましたが、到着するまで気が気ではありませんでした。
 無事に到着し、安心したのも束の間、輸送中にできた右前肢の傷から出血が見られました。毛並みの状態が悪くなり、陸上で休息する時間が長くなり、不安な日々が続きました。私達は餌の量の調節や、運動場の室温を調整するなどして回復を待ちました。その後1週間が経過し、徐々に毛並みも良くなり、さらに1週間が過ぎ元気に泳ぐ姿を見たときには、嬉しくて言葉になりませんでした。
 現在では、メス2頭と同居を始め仲良く元気に暮らしています。メスとの相性も良く、同居から5日後には交尾行動も確認されました。うまくいけば今秋には待望の赤ちゃんが誕生するかもしれません。また、海の中道海洋科学館に貸出した当園生まれのオスも、交尾行動が確認されています。今後、両園で繁殖が期待されるラッコに是非注目してみて下さい。
(野口 直美)