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Safari&Marine

Safari&Marineマレーバクの赤ちゃん誕生

2012年01月22日(日)

 マレーバクの繁殖を目的にブリーディングローンにより、2009年3月に静岡市立日本平動物園からオスを、同年10月には、よこはま動物園からメスを預かり、飼育を開始しました。この2頭の相性もよく交尾を確認後、約400日の妊娠期間を経て、待望の赤ちゃん誕生を迎えました。

■仲良しカップル誕生?!
 マレーバクは本来、単独で生活する動物ですが、2頭は仲が良く一緒に水浴びをしたり、追いかけっこをする姿をよく見かけました。時にはオスがあまりにもしつこくメスを追いかけたのか、メスにおしっこをかけられて、汚れた顔で寝室に帰ってくることもありました。
 2010年4月24日、運動場に出てからウロウロと落ち着かないメスと、そんなメスを追いかけるオス。お互いに興奮して激しく鳴き合い、そして初めての交尾が見られました。

■期待がふくらむ妊娠、そして出産
 その後も何度か交尾を確認しましたが、外見では妊娠したかどうかは分かりません。マレーバクの妊娠期間は約400日。飼育管理のためにも、出来るだけ早く妊娠しているかどうかを調べたいのですが、人間のように簡単には検査ができません。
 一般的におとなしいイメージがあり、比較的人間になつきやすいとされる動物ですが、体重は300kg以上もあり、草食動物でありながら鋭い歯を持っています。また、バクは意外と動きが素早いので、突進されて噛み付かれでもしたらひとたまりもありません。
 オスのバクは非常に人間に慣れているので、普段から体にブラシをかけるとゴロンと寝転んで、採血や蹄の手入れをすることが出来ます。それでも急に立ち上がって、スタッフをヒヤッとさせたことは何度もあります。それに比べてメスは、大変臆病な性格でスタッフが近づくと逃げてしまいます。これでは触ることすら出来ず、妊娠の判断も出来ません。かくして、私達とバクとの長いトレーニングの日々が始まったのです。

 少しずつバクとの距離を縮めて行き、少し触っては逃げられたり、追いかけられたりを繰り返しました。そんな努力の甲斐もあって、トレーニング開始から半年、ついにブラシをかけることに成功しました。メスのバクはブラシが気持ち良いと目を閉じて舌をベロンと出し、オスよりも表情豊かな一面を見ることができました。
 その後トレーニングも進み、エコー器具を腹部に当てるところまでたどりついたのですが、直ぐに動いてしまい、残念ながら妊娠を確定できるほどの画像を撮ることができませんでした。しかしながら、確実に大きくなるメスのお腹を見て、私達は妊娠を確信していました。
 2011年6月23日、スタッフの1人がブラッシング中に乳房を触ると母乳が出たので、出産が間近と判断し、寝室内に多くの乾草を敷き詰め出産に備えました。その2日後の6月25日の朝、寝室をのぞくと縞模様の赤ちゃんが母親の横に見えました。

■赤ちゃん運動場デビュー
 出産後の母親は赤ちゃんを守ろうと必死です。寝室に近づく人間は誰であろうと威嚇され、おしっこをかけられる羽目になってしまいます。スタッフが寝室内に入ると母親が興奮するので、室内の掃除もままならず、餌を投げ入れることしか出来ません。
 赤ちゃんは生まれた翌日には授乳を確認でき、母親の餌の乾草や野菜を早くも口に入れしゃぶり始め、すくすくと育っていきました。しかし、まだ赤ちゃんの性別も分かっていなかったので、一度母親から赤ちゃんを取り上げる必要がありました。
 生後18日、赤ちゃんの運動場デビューの日です。まずは母親だけを外に出し、赤ちゃんの性別判定と体重測定を行いました。性別はメス、体重は15.45kgでした。その時、赤ちゃんが一声だけ「ピィ」と鳴きました。その瞬間、運動場の母親が激しく興奮しだしたので、急いで赤ちゃんを母親のもとへ帰しましたが興奮は収まらず、誤って赤ちゃんを踏みつけてしまいました。近くから見守っていたスタッフが直ぐに寝室の扉をあけ、とにかく親子を寝室に収容しました。興奮していた母親も寝室の中は安全だと思ったのか、間もなく落ち着いてきました。幸い赤ちゃんに大きな怪我はなかったので、10分程度経過してから再び運動場に解放したところ、今度は2頭共に落ち着いており、その日は40分程、運動場に出すことが出来ました。

 その後、赤ちゃんは日に日に成長し、生後2ヶ月程で胴の辺りは白くなり、顔や脚の模様も薄くなってきました。また生後4ヶ月経った頃から母乳よりも果物や運動場の草をよく食べ、母親と同じように水にも入り始めました。
 この冬には親と同じように完全な白黒模様に変わり、親の半分程度の大きさにまで成長することでしょう。  
                                         (本政 龍弘)