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ダブルハッピー 2つの新しい命の誕生 〜ホッキョクグマとエンペラーペンギンの赤ちゃん〜

2009年10月13日(火)

2009年10月13日、2つの嬉しいニュースがアドベンチャーワールドに流れました。地球の両極地、北極と南極を象徴  する動物の新しい命の誕生です。ホッキョクグマの赤ちゃんは2005年から実に4年ぶりとなる誕生です。父親はスウェーデン生まれ、母親はイギリス生まれの共に17歳。
2009年3月中旬に交尾を確認したのち、妊娠、出産を誰もが心待ちにしていました。そして、更に嬉しい事に、なんと同じ日に2004年、2007年、2008年に続く国内4例目となるエンペラーペンギンのヒナが誕生しました。

■待望の赤ちゃん■
アドベンチャーワールドでは、過去に4回のホッキョクグマの出産を経験していますが、残念ながら母親は育てませんでした。2000年には生まれた赤ちゃんの人工哺育を行いましたが、101日令で死亡するという残念な結果になってしまいました。ついには、2005年以降出産もしなくなり、「もう赤ちゃんは望めないのか」と半ばあきらめていた状態でした。
ホッキョクグマの赤ちゃんは大変小さく、外見では妊娠を確定できません。そのため、行動やホルモン値などの変化で妊娠を予想します。当園でも大学と共同で糞(ふん)に含まれるホルモンの値を継続して測定しています。2009年春の交尾後から夏にかけてのホルモン値の動きを見ていると、今回は妊娠の可能性が高いと判明しました。
これまでの妊娠期間が200日前後であったため、出産予定を9月下旬から10月中旬と考えました。今回の赤ちゃんは最初から人工哺育をすることに決めて、打ち合わせや準備を進めていきました。
そして9月24日、食べることが大好きなメスが餌を残したのです。普通なら病気なのでは?と思うところですが、私達は「妊娠している!もうすぐ出産だ!!」と喜びました。なぜなら食欲減退は出産の兆候の1つなのです。その日から、スタッフが毎日交代で泊まり込み、夜間観察を始めました。
泊り込みを開始してから3週間が経過した10月13日、ついにその日がやってきました。午前10時頃、担当者が監視モニターをのぞき込むと、メスがお尻をかなり気にしているようでした。異常に気づき、すぐに他のスタッフを呼び集めました。
午前10時04分に無事に出産。その後、母親を興奮させないようにして赤ちゃんを保護しました。

(2009年10月13日 0日齢)

■人工哺育開始■
体重724gのメスの赤ちゃんでした。幸いにもケガもなく元気な様子です。赤ちゃんの体温が下がらないように保育器に移動しました。33度だった体温も徐々に上昇し、赤ちゃんはしきりにお乳を捜す仕草をします。生まれて1時間半後、ミルクを与えるとゴクゴクと力強く飲み始めたのです。
過去に日本や世界の動物園で人工哺育された資料をもとに、ミルクの種類、濃度や量を決め、さらに毎日の赤ちゃんの体重の伸び方や便の状態を見ながら日々調整もしていきました。また、母親が肛門周囲をなめて便や尿の排泄を促す代わりもスタッフが行います。
赤ちゃんを仰向けにして下腹部をさすると、「グゥッ グゥッ」暴れていた赤ちゃんもおとなしくなり、便や尿を排泄します。
人工哺育をする上で問題となるのは細菌感染です。ホッキョクグマは、北極圏の寒く細菌の少ない環境に生息しています。スタッフは手指や哺乳用具の洗浄、消毒はもちろん、保育器内で使用しているタオルなども滅菌処理を施し、衛生管理を徹底しました。
あとは、なんとか初乳を赤ちゃんに飲ませなければなりません。初乳とは、生後間もない頃の病気に対する抵抗力や栄養分がたくさん含まれている、出産後短期間しか分泌されない母乳です。初乳を飲んでいない赤ちゃんは抵抗力が弱く、細菌に感染しやすくなります。
翌日、母親に麻酔をかけてお乳をしぼりますが全く出てきません。
「よし、直接赤ちゃんに吸わせてみよう!」 赤ちゃんを母親の胸元にもっていくと、すぐにお乳をさぐり始めました。乳首をくわえると、上手に舌を丸めて吸っています。その内「グググッ、グググッ」赤ちゃんが満足している声を出し始めました。赤ちゃんの様子に、誰もが母乳を飲んでいると思い、「やっぱり赤ちゃんは上手に吸うね」と私達は感心していました。
その内に赤ちゃんは、乳首をくわえたまま寝てしまいました。「どれだけ飲んだのだろう」期待しながら体重を計ると、変化がなく、赤ちゃんは母乳を全く飲んでいなかったのです。結局、私達が乳をしぼってその都度、注射器で吸い取るという地道な作業の結果、11CCの初乳を赤ちゃんに与えることができました。

最初は目が開いていなかった赤ちゃんも、生後40日で目が開き手足の力もしっかりしてきました。生後70日、赤ちゃんは体重9?を超え、おぼつかない足取りながら歩けるようになりました。現在、順調に成長していますが突然調子が悪くなり死亡した事例も他の動物園であるため、気を緩めるわけにはいきません。

(2009年12月12日 60日齢)

■もうひとつの新しい命■
今回で国内4例目となるエンペラーペンギンの孵化(ふか)は3年連続となりました。以前、この親鳥は産卵した卵をプールに落としてしまったことがあったので、今回も卵は産卵後すぐに孵卵器の中に入れました。1回目の検卵は産卵から20日後に行います。検卵とは光を卵に当て卵の中の様子を観察することで、ヒナが育っていれば黒い影が見えます。
スタッフが集合し検卵が始まりました。「有精卵!」卵の中でヒナが育っているようでした。その後も10日毎に検卵を行い、産卵から64日目には殻を割りヒナの嘴(くちばし)が見え、その4日後の、くしくもホッキョクグマの赤ちゃんが生まれた同じ日10月13日に卵から完全に出てきました。

(2009年10月15日 2日齢)

孵化から数日間は、ニシン、生クリーム、オキアミを水と混ぜた流動食を作り、注射器の先にゴムチューブが付いたもので直接胃の中へ与えていました。生後45日ぐらいで、小さく切った魚の切り身も与えています。餌を与える時間になると、まるで親鳥に餌をねだるかのように必死で鳴きます。体にもヒナ特有の綿羽と呼ばれる柔らかい羽が生え揃い、まるでぬいぐるみのようです。

(2009年12月3日 51日齢)



■未来へ■
最後に、動物も私達人間も同じ地球で暮らす仲間です。ホッキョクグマ、エンペラーペンギンどちらも地球の極地を代表する動物といえるでしょう。しかし近年、加速度的に地球温暖化が進んでいることは、皆さんご存知の通りです。
 北極と南極を象徴するこの2種類の赤ちゃんは地球温暖化の影響を真っ先に受ける動物達です。
私達はこの希少な動物の命を大切に育てていくと同時に、共に暮らす仲間として地球環境の事も考えていきます。 (大出 幸生)